お知らせ

10話|夜の居酒屋営業復活の話

 

── 僕の武器を、もう一度使った。

 

定食スタイルが軌道に乗り始めたとはいえ、昼頼りの営業では正直、限界も感じていました。

 

コロナも明けて、そこで始めたのが夜の居酒屋営業の復活です。

 

元々、居酒屋経営者。 

おつまみを作るのは得意中の得意分野でした。

だから、夜限定の一品料理や酒の肴をしっかり用意して、営業時間を伸ばしたんです。

中途半端じゃ気にしてもくれません。居酒屋料理メニューもドリンクもすごい数の種類を揃えました。

 

最初は手応えがなくても、やがて金・土・日の夜にお客様が集まりはじめ、

居酒屋メニューを始める前に比べて売上も着実に伸ばすことができました。

 

ムロオカは、「ごはんだけ」の店じゃない。

仕事終わりにふらっと寄ってもらえる“酒場”の顔もある。

お父さんはビールと焼き鳥、お母さんは海老フライ定食、高校生の息子さんはカツカレーのセット。みんなで唐揚げをシェア。

 

もちろん定食だけのご利用もできます。

 

昼と夜。

定食とつまみ。

その両方が揃ったことで、ようやく“店のかたち”が完成した気がしています。

 

海老フライ。

もつ煮。

酒とごはん。

ちゃんと旨い。キッチンムロオカ 

 

やっと形が見えてきました。

 

第9話|定食屋という生き方の話

 

── 安さより、満足してもらうこと。

 

食堂を名乗る以上、いつだって比較されるのは“早い・安い”のチェーン店です。

けれど僕は、そこを追いかけるより 「ちゃんとうまい」を守る 道を選びました。

 

だからムロオカの定食は、メインに小鉢・サラダ・豚汁・デザートまで付く“滞在型”。

どれも既製品は使いません。プリンひとつも、自家製にこだわります。

 

お客様の滞在時間は長くなるし、原価も手間もかかる。

でも、食後に「また来るよ」と言ってもらえた時、

その時間もコストも、すべて意味を持つと信じています。

 

ムロオカは、早い・安いを競う店じゃありません。

ここで過ごすひとときそのものを、ちょっと豊かにする定食屋。

 

ただ、ちゃんと作る。それだけです。

 

テイクアウト部門では、創業時からの看板メニュー「カツ丼」が今も売れ筋No.1。

この一杯が、今もお店を支え続けてくれています。ありがとうございます。

 

お客様のキッチンムロオカでのひとときが、少しでも豊かな時間になるように。

そんな想いで、毎日厨房に立っています。

 

第8話|もつ煮が出来るまでの話

 

── 勝てない。でも、作り続ける。

 

ムロオカのもつ煮は、最初から売れたわけじゃありません。

 

最初はただ、「好きだから作ってみよう」と始めた一品。

味にはある程度自信もありました。群馬の超有名店と並ぶくらいの味は、出せていたつもりでした。

でも、どこかパッとしなかった。

 

そんな時に出会ったのが、噂を聞いて食べに行った都内のもつ煮屋さんでした。

ひと口食べた瞬間、正直、膝が震えました。

「全然、違う…」

その完成度に圧倒され、自分の味に絶望しました。

 

 

味噌を変え、ダシを変え、何度も鍋を洗い直しては煮込み直した日々。

 

味見を重ねるうちに、美味いかどうかすら分からなくなっていきました。

 

それでも、研究し続けていたら、あるお客様が言ってくれたんです。

「俺は、ムロオカのもつ煮が一番好きだよ」

 

あの一言で、やっと報われた気がしました。

ほんとに涙がでました。

 

ムロオカのもつ煮は、ほぼ無化調(化学調味料ほぼ無し)。

カツオと昆布の出汁を効かせ、香りの奥行きにこだわった、やさしいもつ煮です。

パンチがあるのに、深い旨み。濃さより、余韻。

 

万人受けはしないかもしれません。

でも、この味を「うまい」と言ってくれる人のために、今日も鍋に火を入れています。

 

第7話|海老フライが救ってくれた話

 

── あの日の黒板が、空気を変えた。

 

毎日が真っ暗だったあの頃。

厨房の奥で考え続けても、何も見えなかった。

 

ある日、ほんとに何も考えずに気まぐれで書いた「本日のおすすめ」。

手書きの黒板に書いたのは、“海老ヒレ丼”。

 

この時は市場で買ってきた少しだけ大きな海老と、元々あったヒレカツを合わせた、即興のどんぶり。

今程こだわりもせずに、作ったのも深い意味もなく、なんとなく自分が食べたかっただけ。

 

でもそれが、なぜか売れたんです。

お客様が指をさして、「これ気になる」と言ってくれた。

 

そこから、流れが変わり始めました。

1話で書いた通り徹底的に海老フライを研究。

 

何をしても響かなかった店に、やっと「反応」が返ってきた。

おいしそうに食べる顔、写真を撮る姿、また来てくれるお客様。

たったひとつの商品が、店の空気を変えてくれました。

 

「ここの海老なんかおいしいらしいよ。」

 

“売れる”じゃなく、“伝わる”。

それがどれだけ嬉しいか、思い出した瞬間でした。

 

第6話|潰れる……このまま終わるのか、と本気で思った話

 

── 「あそこは、すぐ潰れる場所ですよ」

 

すべてを失ったあと、最後の覚悟で立ち上げたのが「キッチンムロオカ」でした。

ところが契約を結んだすぐ後、契約したとことは違う知り合いの不動産屋はこう言い放ちました。

 

「この物件、長く続いた店はしばらくありませんよ」

 

それでも僕は、心のどこかでタカをくくっていた。

**「経験もあるし、自分なら大丈夫だろう」**と。

 

幻のスタートダッシュ

 

オープン当初は“カツ丼をメインにスタート”。

初月は想定を大きく上回る客足で、「ほら見ろ」と胸を張った。

しかし4ヶ月目、売上は前月比マイナス40%。

撒いたチラシは反応ゼロ。

立地の不便さと駐車場の狭さが、数字に牙をむき始めました。

 

心を折った一言

 

そんなとき、来店したお客様に率直に言われました。

 

「この場所じゃ、長くはもたないよ」

 

またか。。。

 

内容も吟味しての率直な意見でした。わかっていたつもりの現実を、真正面から突きつけられた瞬間でした。

 

厨房の奥で崩れる日々

 

自信も、プライドも、日ごとに削られていく。

仕込みは雑になり、味はぶれ、廃棄が増える。

キッチンに立つ自分の姿さえ、ぼんやりとしか浮かばなくなっていた。

 

家では「もう飲食なんて嫌になりそうだ」とこぼすことが増え、

肩の力は抜け、息だけが重くなる。

 

——それが、ムロオカ創業4ヶ月目。

人生で一番暗かった時期でしたが、この底があったからこそ、後の再起につながります。

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