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第4話|僕の原点の話

 

── 台所に立つのが、ただ嬉しかった。

 

幼い頃、家の台所で袋麺を作るのが好きでした。

お湯を沸かして、もやしや卵を入れるだけ。

それだけで、なんだか胸が高鳴った。

一生懸命に作ったインスタントラーメンは、自分史上最高にうまかった。

 

高校を中退して、最初に入ったのは近所のホテルの厨房。

皿洗いに皮むき、盛りつけ……

地味な作業ばかりだったけれど、不思議と物凄く楽しかった。

「この世界が僕の居場所だ」と、自然に思えた。

 

そこから、神奈川で本格的な板前修行へ。

今の時代あり得ませんが、

エアコンも風呂もない寮に住み、手取りは月8万円。

朝6時半から夜9時過ぎまで働き、休みは週に1回だけ。

まさに“地獄”みたいな毎日でしたが、不思議と料理を嫌いになったことは一度もありませんでした。

 

群馬に戻ってからは居酒屋に入り、やがて店長に。

この頃から、料理だけじゃなく“商売の面白さ”にも惹かれていきました。

人が集まり、笑い、酔い、帰っていく。

その流れをつくるのが、たまらなく面白かった。

 

そして24歳で独立。

最初の店「居酒屋 平八」は、ありがたいことに繁盛させていただき、翌年に2号店、その次に3号店…

 

30歳の頃には、5店舗を構え、社員・パート・アルバイトを合わせて70人を超え、売上もケタ違いに伸び続け、街を歩くだけで風を切り、自分が何者かになれたそんな気がしていました。

 

思えば、人生のピークをあの頃に迎えていたのかもしれません。

 

安心してください。

このあと、ちゃんと転落します。