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第8話|もつ煮が出来るまでの話

 

── 勝てない。でも、作り続ける。

 

ムロオカのもつ煮は、最初から売れたわけじゃありません。

 

最初はただ、「好きだから作ってみよう」と始めた一品。

味にはある程度自信もありました。群馬の超有名店と並ぶくらいの味は、出せていたつもりでした。

でも、どこかパッとしなかった。

 

そんな時に出会ったのが、噂を聞いて食べに行った都内のもつ煮屋さんでした。

ひと口食べた瞬間、正直、膝が震えました。

「全然、違う…」

その完成度に圧倒され、自分の味に絶望しました。

 

 

味噌を変え、ダシを変え、何度も鍋を洗い直しては煮込み直した日々。

 

味見を重ねるうちに、美味いかどうかすら分からなくなっていきました。

 

それでも、研究し続けていたら、あるお客様が言ってくれたんです。

「俺は、ムロオカのもつ煮が一番好きだよ」

 

あの一言で、やっと報われた気がしました。

ほんとに涙がでました。

 

ムロオカのもつ煮は、ほぼ無化調(化学調味料ほぼ無し)。

カツオと昆布の出汁を効かせ、香りの奥行きにこだわった、やさしいもつ煮です。

パンチがあるのに、深い旨み。濃さより、余韻。

 

万人受けはしないかもしれません。

でも、この味を「うまい」と言ってくれる人のために、今日も鍋に火を入れています。