お知らせ
2025.07.09 (Wed) 16:27
── ムロオカ定食は、 僕の“人生のやり直し定食”です ── 第8話|もつ煮が出来るまでの話
第8話|もつ煮が出来るまでの話
── 勝てない。でも、作り続ける。
ムロオカのもつ煮は、最初から売れたわけじゃありません。
最初はただ、「好きだから作ってみよう」と始めた一品。
味にはある程度自信もありました。群馬の超有名店と並ぶくらいの味は、出せていたつもりでした。
でも、どこかパッとしなかった。
そんな時に出会ったのが、噂を聞いて食べに行った都内のもつ煮屋さんでした。
ひと口食べた瞬間、正直、膝が震えました。
「全然、違う…」
その完成度に圧倒され、自分の味に絶望しました。
味噌を変え、ダシを変え、何度も鍋を洗い直しては煮込み直した日々。
味見を重ねるうちに、美味いかどうかすら分からなくなっていきました。
それでも、研究し続けていたら、あるお客様が言ってくれたんです。
「俺は、ムロオカのもつ煮が一番好きだよ」
あの一言で、やっと報われた気がしました。
ほんとに涙がでました。
ムロオカのもつ煮は、ほぼ無化調(化学調味料ほぼ無し)。
カツオと昆布の出汁を効かせ、香りの奥行きにこだわった、やさしいもつ煮です。
パンチがあるのに、深い旨み。濃さより、余韻。
万人受けはしないかもしれません。
でも、この味を「うまい」と言ってくれる人のために、今日も鍋に火を入れています。